[毒書レポート] 『脳と仮想』
毎日一冊!毒書レポート 第2回。
『脳と仮想』、茂木健一郎、新潮文庫

 我々の「こころ」は今日の科学の常識ではニューロンの活動の
随伴現象とされる。それは脳みその中という限られた領域でなされるが、
しかしその「1リットル」の空間を超えて広い大宇宙を思い描くこともできる。
「こころ」は脳内現象であると同時に、脳という限定的な空間から
解き放たれてもいる。

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毎日一冊!毒書レポート 第2回。
『脳と仮想』、茂木健一郎、新潮文庫

「サンタクロースは実在するか?
 この問いに対して、どのような答えが可能か。」


 我々の「こころ」は今日の科学の常識ではニューロンの活動の
随伴現象とされる。それは脳みその中という限られた領域でなされているが、
しかしその「1リットル」の空間を超えて広い大宇宙を思い描くこともできる。
「こころ」は脳内現象であると同時に、脳という限定的な空間から
解き放たれてもいる。

 「こころ」が脳内現象だとして、「この場所」や「あの人」、果ては
「私の体」までも、その存在を証明することは不可能だ。
すべては仮想として、「存在すると思われる」という記述に留まらざるを得ない。

見えるもの、感じること、全ては仮想。

 茂木は、上の「サンタクロース」を巡る記述の中で
サンタクロースは決して体験され得ない仮想であるが、
その体験不可能性こそが本質的であると語る。
 「科学的でない」ゆえにあまり研究されてこなかった「仮想」。
本書は仮想の持つ・ある切実性をめぐって、茂木氏一流の
ロマンティックな語り口で展開される。

 「他者」と「私」はどんなに言葉を尽くしても完全な相互理解を得られない。
それは常識であるし、また正しい。しかしその実感以上に相互の距離は遠い
・・・それこそ「実在の証明」もできないほどに。
脳と脳とのあいだには、ある意味宇宙と宇宙ほどの絶対的な断絶が横たわる。
それを繋いでいるのが、仮想。

 たとえば1.5メートル隔てている私と友人。そこに存在する無限の断絶と、
奇跡のように橋渡しする仮想。そのダイナミズム。
 そういうものを伝えることが、茂木の意図なのだろうと思う。
 実存哲学系の本を読み漁りたくなった。


・・・

メモ。
・茂木の文章には、自ら抱いた感想や驚きを、その熱を保ったままで
 読者に伝える力があるように感じる。言うなれば詩的なものだ。
 
 「熱を伝える」ことのできる文章は美しいと思う。しかし同時に、
 自己陶酔に陥らないような配慮も必要であろう。勉強したい。

・文章のスタイルが安定しない・・・というか、
 著者の言いたいことを要約するのに終始して、独自の批判に至っていない。
 「要約」という作業の裏には私の意思による選別が働いてはいるが、
 それにしても、もうちょっとスマートな文章を書きたいと思う。
 古本屋で買った、小林秀雄全集を引っ張り出そう。

・新潮文庫版、増刷(6刷、累計60000部)されたそうである。
 おめでとうございます。
【2008/02/10 23:10】 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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